高知のシアターホリックが3月に熊本で公演

2018.02.16

劇団シアターホリック(高知)が『孤独、あるいはマルキドサドに学ぶ幸せな人生の過ごし方』(作、演出:松島寛和)を3月3日(土)~4日(日)、熊本市東区東本町の花習舎で上演する。

劇団シアターホリック『孤独、あるいはマルキドサドに学ぶ幸せな人生の過ごし方』

高知県立大学を母体として活動している劇団シアターホリック。今回、代表の松島寛和の出身地でもある熊本で初の公演を行う。この公演は、G/PITチャレンジフェスティバル2018参加作品として3月14日(水)~15日(木)に名古屋市中区栄のG/PITでも上演される。松島寛和に劇団や作品について話を聞いた。

ーまずは自己紹介と、劇団紹介をお願いします。

どうも。松島です。熊本市出身、大学進学をきっかけに東京に出て演劇活動をし、その後高知県高知市に移住して劇団シアターホリックを旗揚げしました。シアターホリック、通称シアホリは高知県立大学の演劇サークルとして活動しています。ぼくとOGの山田紫織が社会人ですが、その他のメンバーは学生です。
学生さんたちは、自覚があるのかどうなのかわかりませんが今の時代をダイレクトに生きているので、社会問題や今ぼくたちが置かれている状況をシンプルな形で感じさせてくれることがあります。この数年僕の中で、そういう社会問題を表現したいという気持ちが強くなりました。第21回本公演『希望の星』では、ネグレクトや貧困が原因で風俗嬢になった少女たちが登場する作品を上演、第22回本公演『樺沢家の三人姉妹』はカラマーゾフの兄弟を原作に家族問題を取り上げました。テーマとしてはシリアスなものを扱いがちですが、中身は明るく楽しいコメディです。軽い気持ちで見ていただけると思います。

ー活動内容を教えてください。

数年前から四国内の演劇交流を活発にしたいという思いがあって、劇団で四国内のツアーやイベントへの参加、脚本提供などいろんな活動を続けてきました。それが実を結んだといいますか、最近は四国、中国地方と演劇人のつながりが強くなってきています。と、なれば、人間は欲深なもんで、もっと遠い他の地域でも上演したいという気持ちになるものです。今後はどんどん他地域に進出していきたいと計画しています。どうぞシアターホリックをよろしくお願いします。以後お見知り置きを。

ー松島さんは熊本のご出身とのことですが、熊本で行っていた演劇活動や、今回の公演が実現したいきさつなどを教えてください。

熊本には予備校を出るまで住んでいました。多感な高校時代を過ごした、ぼくの創作の基礎を作ってくれた街です。その当時、熊本にはいくつもの小劇団があって、同仁堂のホール(※1)やら女性センター(※2)やらでたくさんの公演をやっていました。演劇を覚えたての時期で、劇場に行くこと自体が楽しくて、とてもイケナイものを覗き見るような感覚になりながら足繁く通ったものです。そして市民劇場でもいろんな作品を見ました。無名塾の『リチャード三世』や小沢昭一の『唐来参和』は今でも心に残っています。小さな映画館もたくさんありました。きわどいフランス映画とか、風景が綺麗なイタリア映画とか、メジャーな作品から不思議な作品までたくさんの映画を見ました。とにかく今の自分の作風は熊本で得たもので出来上がっていると言っても過言ではありません。
劇団に高知県立大OGの山田紫織というのがいるんですが、彼女が大学を卒業後もシアホリに残って活動を続けると決まった時に、いつかお互いの故郷で公演しようという話をしました。彼女は函館出身です。九州から見ると「函館!!?? マジで!!」くらい遠い感じがしますが、四国の高知から見れば「熊本!?」と「函館!!?」くらいの違いしかありません。今回は縁あって熊本公演が実現しましたので、函館も、そして次に熊本に来るときは山田紫織が一緒に出演する作品をやりたいですね。

ー本作はどのような作品でしょうか?マルキ・ド・サド(※3)というSMのSの語源となった方の名前がセンセーショナル響きな言葉だけに、作品に内容が気になります。

マルキ・ド・サドって、名前だけ知ってるという方がほとんどで、どんな作品を書いたのかその内容まではあまり知られていないように思います。今回の上演作品は「原作:マルキ・ド・サド」と言いながら、現代が舞台の、ごく普通の大学生を主人公にしたお話です。
サドの作品から「美徳の不幸」を中心に取り上げ、執筆された時代と現代との接点を探りつつ創作しました。
サドはサディズムの語源ということで、セクシャルな面ばかりが取り上げられるかもしれません。というより、現在はSMという言葉が一般化していて、「殴って気持ちいい」「殴られて気持ちいい」というように単純な解釈で片付けられているようです。でもマルキドサドの作品では、そんな単純なSM関係は登場しません。フランス革命前後のサドの時代はSMの関係性が認識されていませんでした。なので、サドが描いているのは現在使われているSMとは若干違っていて、もっと原始的で、いわば思想に近いものだとぼくは考えています。
相手のことが好きならば、優しくするのが普通です。でもその相手を殴ってしまう。常識的にはおかしな行動です。また一方に、殴られることが嬉しい、殴られて快感であるということがある。これも理屈に合いません。この2つは感情と行動が矛盾していておかしいのですが、それでもこんな感覚が実在するのをぼくらはなんとなく知っています。たとえ自分にはその趣味嗜好がなかったとしても、映画などのフィクションで見た時に感情移入することができる。登場人物に同情したり、批判したりして寄り添うことができます。常識的にはおかしな人間関係を描くお話を、それなりに楽しく見ることができるというのは、無意識でそのおかしな人間関係を認めているってことじゃないかと思います。つまり世の中って正論だけで成り立ってるわけじゃないってことですね。それをぼくらはどことなくわかっている。
おかしな奴やおかしな事柄が世の中にたくさんあるんだと、ぼくらは無意識のどこかで、あきらめに似た形で認めているんじゃないかと、サドを読んでいて強く感じます。

ぼくはパワハラとかモラハラとかそういうの許せなくて、話に聞くだけでも嫌な気持ちになります。が、とはいえ自分にもパワハラしてしまう可能性がある。ぼくにはその恐ろしい自覚があります。パワハラしたくないというのが正論側の意見とするなら、正論だけでは片付けられない、生々しい人間性も僕のどこかに潜んでいます。サドの作品が持つ魅力って、その「見たくない感覚」をクローズアップして再認識させてくれるところです。自分が正義の側にいると思ったら大間違い。そもそも世の中は正義と悪に二分されない。そして正義と悪は視点が変わると逆転する。なにが正義かは立場によってまるっきり違います。同じ行為もある瞬間は正しくて、違う立場になると間違っていることがある。もしかしたら将来的にはパワハラが世間的に正しいと判断される時があるかもしれません。そんな不安定な価値観を認めるのはとても難しいことですね。

ーパワハラやモラハラ、ハラスメントが描かれている内容ですか?

なんだか難しい話を延々と述べて来ましたが、今回の『孤独、あるいはマルキドサドに学ぶ幸せな人生の過ごし方』はコメディです。全編がくだらなくてバカバカしいお話です。でも、その根底に、マルキドサドから学んだ処世術といいますか、フランス革命当時から現代に通じる社会観が流れています。サドについて全く興味がなくても、ただ「ばっかでー」と笑い飛ばしていただいてもいいですし、もしサドを読んだ方がご覧になった場合は、サド作品のサディズムを多少でも感じていただけたら幸いです。

ーでは最後にmola!をチェックしている方へメッセージを!

熊本で公演できるのがとても嬉しいです。たくさんの方との出会いを楽しみにしています。ほんと、難しげなことをたくさん言いましたが、作品の中身はバカなので、どうぞ軽い気持ちでご来場くださいませ。

※1)同仁堂のホール
熊本市中央区上通町、同仁堂上通ビル4階多目的ホール「スタジオライフ」のこと。

※2)女性センター
熊本市中央区黒髪3の熊本市男女共同参画センターはあもにいのこと。

※3)マルキドサド
マルキ・ド・サド。フランスの貴族、小説家。SMのS、サディズムの語源。


出演は、松島寛和。

チケットは、一般2,000円(当日2,500円)、大学生以下1,500円(当日2,000円)。イープラスでの取り扱い。

お問い合わせは劇団シアターホリックTheater.holic.2004@gmail.comまで。


劇団シアターホリック『孤独、あるいはマルキドサドに学ぶ幸せな人生の過ごし方』

作・演出・出演:松島寛和
日時:2018年3月3日(土)14:00/19:00
        4日(日)14:00
会場:花習舎(熊本市東区東本町1-62-3F)
料金:一般2,000円(当日2,500円)
   大学生以下1,500円(当日2,000円)

【関連サイト】
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劇団シアターホリック『孤独、あるいはマルキドサドに学ぶ幸せな人生の過ごし方』

※情報は変わる場合がございます。正式な公演情報は公式サイトでご確認ください。

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