ブルーエゴナク、演劇の出発点へ

2021.09.26

ブルーエゴナク(北九州)が『眺め』(作・演出:穴迫信一)を10月1日(金)~3日(日)に北九州市小倉北区室町の北九州術劇場 小劇場で、10月8日(金)~10日(日)に京都市南区東九条南河原町のTHEATRE E9 KYOTOで上演する。

ブルーエゴナク『眺め』

声は、振り返る。わたしたちのささやかな運命を。
8名の俳優による声と体の、永遠のような75分のミニマルミュージック。

ブルーエゴナクが昨年度発表した『ザンザカと遊行』『Coincide 同時に起こること』を経て、今回新作として取り組むのは、「声」の可能性についての演劇『眺め』。「声」は舞台上の俳優や観客にどのような影響力を持つのかを検証する、新たな形式の演劇作品になるという。本作について、作・演出を務める穴迫信一に話を聞いた。

―本作は『眺め』は「声」がキーワードだそうですが、声にフォーカスを当てることにしたのはどのような経緯があったのでしょうか。

昨年、TOKAS OPEN SITE 5(※1)という企画の中で『Coincide 同時に起こること』という作品を作りました。その作品は新型コロナ感染症拡大防止に伴って、上演ではなくラジオドラマや楽曲を聴くようなオーディオリリースに切り替わりました。その際、はたして舞台上に俳優がいる必要ってあるのかなということが引っかかりました。というのも、そもそも『Coincide 同時に起こること』は3名の俳優による20分ずつのモノローグで構成されている作品で、膨大な情報量を一つのリズムの中で延々と語る形式だったため、本人の実体によってその語られている言葉にピントが合いにくくなるのではという懸念が発生したからです。姿はなくて、声だけが聴こえる。そこに字幕として文字が出ている。それくらいがちょうどいいバランスなのではないかと。その後、上記の通り『Coincide 同時に起こること』がオーディオ作品化された時に、ああこれはやっぱり声を聴く作品だったんだなと確信しました。しかしそれはラジオドラマだったとか、もはや音楽だったとか、そういった合点ではなく、むしろ声を聴くことだけで成立する演劇の出発点だと感じました。そしてオーディオ作品であることによって、鑑賞者の身体性も限定されることがない。いつどこで聴くかによって、さまざまな想像力を促す力があるのではという可能性を感じました。そこで、今回舞台上での上演に戻ったときに改めて「声」から始めてみたいと考えました。舞台上に「声」が聴こえる。その「声」を巡る物語を、今度は俳優と観客の身体で作っていくようなイメージです。

※1)TOKAS OPEN SITE 5
2016年から行われている、トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)の企画公募プログラム。多様な表現活動が集まるプラットフォームの構築を目指し、展示部門、パフォーマンス部門、dot部門が公募で選ばれる。

―現在の手法に至るまでの、これまでの創作過程を教えてください。

記憶を題材にしたモノローグは、2018年に製作した『sad』から生まれた手法です。ページ数にして最大7ページくらいで改行も入らない1人語りが延々と続くのですが、個人的にも書きたいことを書けている実感があって、かつ作品としてしっかりお客さんに届いた感触もありました。『sad』でテーマにしていたのは大きな悲しみの裏でなかったことにされていくささやかな悲しみでした。それを登場人物が語るのですが、個人的な記憶の一片ばかりですから、ある意味で共感すら求めない、全体の物語に関係のない話ばかりでした。しかしそのささやかさが作品全体の世界観を射止めていて、忘れられていく悲しみに焦点が絞られ、とても魅力的な作品になりました。以降の作品のモノローグも、同じく登場人物が記憶を振り返るようにして語られるというルールにしています。音楽的な手法の部分ですが、僕のテキストは句読点のみをブレスのタイミングにするという指示があるため、それを守って読んでいただければ、ひとつのリズムが形成されるようになっています。そこに俳優さん自身の声やニュアンスが組み込まれるため、楽譜と奏者のような関係になっていると感じます。最近の作品では句読点のみならず、HIP HOPのトラックに合わせたシーンなどは、一度曲に合わせて僕が歌い、それを聴いて覚えてもらうというやり方でも作っています。僕は高校生くらいまでラップをやっていたのですが、演劇を始めた時、その技術や手法をそのまま使うことにどうしても違和感があったのですが、今のやり方、つまり〈発話リズムの移植のような作業〉は、大変ですけどとても楽しいです。

―本作の内容について教えてください。

今作では過去編と未来編の連作になっています。過去編は、木之瀬雅貴さん演じる〈日差し〉の視点から、未来のパートナーである小関鈴音さん演じる〈森〉との、婉曲しながらもとてもシンプルな関係が描かれます。物語は2人の決別から始まり、そこにアシダカグモ(菅一馬さん)、森の父・育朗(日髙啓介さん)、森の友達・ノミ(野村明里さん)の登場によってより関係は悪化していきます。その末、日差しは見たことはあるけどいつもと違う、過去とも未来ともつかない空間に漂着します。そこである人と出会い、それをきっかけに現在の時間に還ってくる。そして、日差しと森は再び出会い直します。これが過去編のほとんどです。未来編は平嶋恵璃香さん演じる、日差しと森の娘である〈春望〉が主人公です。春望も壮大で切ない運命を背負いながら、重実紗果さん演じる陽子ひいばあちゃんを探す旅に出ます。また高山実花さん演じる〈せかい〉が作品世界全体を複雑に揺り動かします。全員が主人公のように見えると思います。

―最後に、この記事をチェックしている方々に一言お願いします。

ブルーエゴナクは来年で旗揚げ10周年です。この10年の間に九州各地の多くのお客様や演劇人のみなさまと出会うことができました。コロナ禍による舞台上演の障壁は数えきれませんが、今僕らが直面しているのは集客の問題、つまり演劇から劇場から離れてしまった方々に、どうやって演劇の面白さや豊かさに出会い直してもらえるかということです。とにかく今作をもっと多くの方に観てもらいたいです。本作『眺め』はきっと観てくださった方々に何かを残す力を持っていると思います。あとはお客さん一人一人に足を運んでいただくだけです。この時世においてもちろん無理は言えませんが、いつか観たエゴナクがあんまりだった方や、久しぶりに演劇を観るという方にも、ぜひ観てもらいたいです。九州拠点の、ひとつの集団の、集大成的作品です。

出演は、平嶋恵璃香、野村明里、小関鈴音、高山実花、木之瀬雅貴。声に、日髙啓介、重実紗果、菅一馬。

チケットは一般3,000円(当日3,500円)、U24 2,500円(当日3,000円)、高校生以下1,000円。チケットぴあ(Pコード:507-587)、CoRichチケット!北九州芸術劇場オンラインチケット(北九州公演のみ)、THEATRE E9 KYOTO(京都公演のみ)での取り扱い。

お問い合わせはブルーエゴナクegonaku@gmail.com、080-1710-2887まで。


ブルーエゴナク『眺め』

作・演出:穴迫信一
音楽:COMPUMA
料金:一般3,000円(当日3,500円)
   U24 2,500円(当日3,000円)
   高校生以下1,000円

【北九州公演】
日時:2021年10月1日(金)19:00
        2日(土)14:00/19:00
        3日(日)14:00
会場:北九州術劇場 小劇場(北九州市小倉北区室町1丁目1-1-11)

【京都公演】
2021年10月8日(金)19:00
     9日(土)14:00/19:00
     10日(日)14:00
会場:THEATRE E9 KYOTO(京都市南区東九条南河原町9-1)

【関連サイト】
ブルーエゴナク
ブルーエゴナク(Twitter)

ブルーエゴナク『眺め』

※内容は変わる場合がございます。正式な情報は公式サイトでご確認ください。

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