「えんげき・とれたて新鮮市」トークレポート

2015.10.12

10月10日(土)〜11日(日)に宮崎市船塚のメディキット県民文化センターで行われた「えんげき・とれたて新鮮市」。宮崎県内外の若手劇団が集まって、リレー形式で「走れメロス」を演じる企画、RELATIONSHIP THEATRE『走れ!メロス』と、不思議少年(熊本)が宮崎の地元キャストを起用して製作した『南の国から』が上演された。

10月10日に2つの公演の合間に行われたトークでは、宮崎県立芸術劇場の演劇ディレクター、永山智行を進行役に、RELATIONSHIP THEATRE『走れ!メロス』に参加したユニット集合住宅(熊本+福岡)の北村茜と寺川長、ハコベラ(北九州)の青木裕基と金子愛里、みやざき演劇若手の会(宮崎)の餅原菜々と伊藤海が今回の企画について語った。このトークの模様をレポートする。


—まずはこの「えんげき・とれたて新鮮市」とはどういう企画か説明をお願いします。

伊藤 「えんげき・とれたて新鮮市」は今年で3年目になるんですけど、今年は九州内から来てもらった若手劇団による短編「走れメロス」の上演と、全国で活躍している新進気鋭の団体の公演を行いました。これまでは台本のショーケースとして、さまざまな短編を上演していたのですが、今年は「走れメロス」という1つの作品を3つの団体でつくったらどうなるか、ということでRELATIONSHIP THEATRE『走れ!メロス』という企画になりました。

—今回はどういういきさつで参加することになったんですか? まずはユニット集合住宅さんから。

北村 (伊藤)海さんから、私とますなが(あすか)にお声掛けいただいて。私が同じ熊本の寺川さんを誘って。
寺川 あとひとり男性キャストがほしいと思っていたんですけど、県外の方で、お願いしてた本命の方に断られて。消去法でケニーになりました。決め手になったのは劇団きらら(熊本)の池田美樹さんの一言で、「誰かいい俳優いないですかね」と相談したところ、「非・売れ線系ビーナス(福岡)のケニー君がいいんじゃない?」と言われて、「まあ、差し支えはないな」と思って。

—そのケニー君といっしょに作って、どうでしたか?

寺川 いっしょにやるのは今回が初めてなんですけど、見た目に反して真剣なんですよ。真摯に取り組んでいる。ただ、それ以上に休憩時間がうるさくて。真剣なのはなんとなく知ってましたけど、休憩時間にうるさいっていうのは知りませんでした。

—ケニー君は去年の非・売れ線系ビーナス『そう遠くない』に続いて2年連続の宮崎ですが、宮崎の印象は?

ケニー (客席の方から)宮崎たのしいです。ヒキョウ感がある。

—えっ、卑怯?

ケニー 秘境です秘境。

—それは、田舎という意味で?

ケニー いや。秘境感。秘境感があります。秘境感。

—……。今回メロスに取り組んでみてどうでしたか?

北村 私が所属するwith a clink(熊本)のIsabelが作・演出なんですが、メロスが大嫌いだったんですよ。ただ、海さんが書いた戯曲があったので、それをベースに自由に書いて。
寺川 かなり自由にのびのびやらせてもらいました。自由にやっていいよって言うんで自由にやったら、「それはしなくていい」みたいなことも言われたりしながら。

—続いてハコベラさん。ハコベラさんはどういう団体なんでしょうか?

金子 ハコベラは北九州の二十歳前後の若手が集まった……二十歳前のひとはいないですね、二十歳後の男女が集まったユニットです。年末年始の七草の収穫のバイトで出会った4人です。

—北九州では、七草のバイトで演劇人が集まる風習みたいなのがあるんでしょうか?

青木 あ、一応僕が代表なんですけど、僕は飛ぶ劇場(北九州)にも所属してて、飛ぶ劇の先輩で七草のバイトをしている方がいて。その方に誘われて始めました。朝は5時過ぎから自転車漕いで合馬(おうま)というところに行って、夜遅くに帰ってくるという生活だったんですが、それで疲れているところを、疲れにつけこんで「ユニットやろうよ」って誘って、(無気力な感じで)「うん……いいよ……」って言わせて。4月に第1回公演を行ったんですが、いろんな方に書いてもらった短編4本をみんなで演出しました。

—今回どうやってあのメロスを作ったんでしょうか?

青木 海さんの戯曲をみんなに配って、「これを使ってもいいし無視してもいい」とは言われてたんですが、どうなのかなと思って、スカイプ会議のときに海さんに「これは使わなくていいですか?」って確認して。「いいよ」ということだったので、じゃあ無視しようと思って、みんなでやりたいシーンを持ち寄りました。「俺は風俗のシーンがやりたい」「馬が人間になったらおもしろくない?」みたいな感じで。セロリスティック(※1)もそうです。

—あのセロリスティックはどうやってできたんですか?

青木 あそこはあいりょん(金子)が台本を書いて。
金子 私は会議に参加できないことが多かったんですけど、ある日「あいりょんは風俗嬢の役だから」って言われて、「あ、わかったー」と思って書きました。セロリスティックは……カフェ会議で出てきて決まったんだよね?
青木 セロリスティックって言うの噛んだら「セリヌンティウス」にならない? みたいな。

—「走れメロス」という作品をどう思いますか?

青木 好きです。

—どのへんが心打たれたんですか?

青木 ……ない。好きじゃないかも。

—……。では最後にみやざき演劇若手の会。今回のキャストはどうやって集まったんでしょうか?

餅原 「いっしょにやろう」と言って集まりました。(山室)曹俉さんとは、週に1回劇団の稽古で会うんで、そこでいっしょにやろうって言って。冨森さんとは元からいっしょにやりたくて。あとのふたりも「いっしょにやろう」って言って。

—メロスの話が100均の話になってましたけど、どうやって思いついたんでしょうか?

餅原 メロスが走り続けられない、過酷な環境を作ろうと思ったら……あんな話になりましたけど、実話じゃないですよ! 実際は、私は100均で働いてるんですけど、もっと和気あいあいとした感じです。

—今回100均の話にしようと思ったのはなぜですか?

餅原 メロスを読んで、それまでは「走り続ける」っていう印象しか持ってなかったんですけど、裏切るとか裏切らないとかで葛藤するみたいな、人間っぽい感じがしたので、それをもうちょっと自分たちに近い感じにしようと思った時に、現代の「走らされてる感じ」の設定にしようとしたら、アルバイトとかパートかな、と思いました。

—若手同士が集まってこういう企画をやることに関して、お互いどう感じましたか?

寺川 お互いのお芝居に出る、というのは今日決まったんですよね。
金子 自分たちにないところばかりで、すごいなと思いました。劇中で歌うのも、メロスを100均にするというアイデアも。
寺川 みんなこうも違うか、という印象です。三者三様というか。「なんか……セロリスティックとかやってる!」って。
餅原 集合住宅さんはすごい……「あ、そうか」って思いました。ハコベラさんはすごい……メロス……「あ、すげえ」って感じ。アイデアがすごいよかった。……あー、言葉が出ない!
伊藤 アイデアやエネルギーがすごかった、ってことですよね? 初日、みなさんのおかげでたのしいお祭りができていると思います。お互い反応しあっているというか。このあと熊元の不思議少年さんの公演もあります。全国から応募があった中で、不思議少年さんを選ばせていただいたんですが、こちらもぜひたのしんでください!


本番の10日ほど前から宮崎入りして、作品のブラッシュアップを図る団体もあり、また、本番当日にお互いのシーンに出演するという演出も生まれたことから、宮崎県内外の若手演劇人の交流を図るという目論見はうまくいっていることが伺えた。近年、コンクール形式の短編演劇の上演会が全国各地で盛んだが、最優秀作を決めずとも、ひとつのテーマで競演するというこの企画では、互いが互いをよきライバルとして、また、ともに作品をつくる仲間として、刺激しあい、意識しあっているように感じられた。観客も、このあとに上演された不思議少年の作品も合わせて楽しんでいる方が多かった。

時同じくして、演劇ディレクター永山智行の退任と、新ディレクター立山ひろみの就任が発表され、今後の宮崎の演劇シーンはまた新たな展開を迎えることが予想されるが、今後もこういった事業で、宮崎独自の空気を盛り上げていくことを期待したい。

構成・執筆:藤本瑞樹(kitaya505)

※1)セロリスティック
劇中、超重要なキーワードとしてセロリスティックが登場。親友・セリヌンティウスのことを忘れてしまったメロスは、「セロリスティック」という言葉の語感から次第に「セリヌンティウス」のことを思い出すという、感動的な場面があり、多くの観客が涙を流した。

【関連サイト】
メディキット県民文化センター『えんげき・とれたて新鮮市2015』詳細ページ

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