池田美樹(劇団きらら)『ガムガムファイター』インタビュー(後編)

2015.12.04

前後編に分けてお送りしている劇団きらら・池田美樹の『ガムガムファイター』インタビュー。前編は創作のキーワードについての話が中心だったが、今回は、キーパーソンとなる客演、有門正太郎に迫る。

※写真は劇団きらら『ガムガムファイター』熊本公演(撮影:劇団きらら)

全く合わない俳優・有門正太郎

―なんで今回有門さんを呼ぼうと思ったんですか?

初対面は8年前、北九州芸術劇場で。私は演出で、正太郎くんは別チームの出演者で。飛ぶ劇の俳優さんとしての正太郎くんはもちろん知ってたけど、直接会ったのはそのときが初めて。とにっっかく印象が悪くて(笑)。「あ、有門くんだ」と思って会釈したら、お辞儀もなくこっちを睨んでる。「えぇ?」とか思って、あたしも睨み返して。そこからしばし睨み合い。「絶対向こうから挨拶するまで見続けてやる」って。向こうも「ケッ、きららごときが」と思ってんのかな、と思って。後日その話をしたら、正太郎くんはまったく覚えてなかったっていう。あたしの一方的な被害妄想だったみたいだけど、そんな初対面でした。

劇団きらら『ガムガムファイター』熊本公演(撮影:劇団きらら)

でも寺田くん(※1)が出てくれた『コデ。』という作品で、正太郎くんがアンケートにすごく大きい字で褒めてくれてて、「あれ? いいひとかも?」って(笑)。以来ずっと気になってたんだけど、喋る機会もほとんどなくて。そしたら今年、「時空寄席」で共演する機会があって、宴会のときに近寄ってみた。でも話せば話すほど、「全然合わねー!」って思って(笑)。何振っても視点が違う! 私が昭和少女小説なら、正太郎くんはコロコロコミック。正太郎くんもすごい困ってて。でもここまで合わなかったら逆に面白いかなーと思って。キツかった40代を過ぎて50代になって、ちょっと調子に乗ってたから、ここらで「合わなさ」に挑戦してみたいなって、

―40代キツかったんですか?

キーツかったよ! もう! なにやってもうまくいかない。てか、もう「無理だ」と思い込んじゃってた。でも50過ぎて急に目の前が明るくなって、いろんなことに「挑戦したい」とか思うようになって。で、正太郎くん。「合わない! でも惹かれて仕方ない正太郎くん!」っていう、両想いではあるのに会話の成り立たない感じ。ハードル高そうだけど挑戦してみようと思って出演のオファーしたら、快諾してくれて。でも稽古は実際にほんとに……すごくキツかったと思う。……(小声で)正太郎くん、何か言ってました?

―いや全然。すごく楽しんでる感じがしましたよ。

……よかった。実際、すごく稽古して……。熊本に滞在してくれて、稽古は夜なんだけど、昼間も時間が空いてるから、2週間ずーっと稽古して、……「稽古3割・雑談7割」みたいな感じだけど。あんなにおしゃべりが好きな人だとは思わなかったなー。

―え? 無口なイメージだったんですか?

自分にメリットのないことには興味がない人だと思ってました。

―メリットがあるないをあまり考えない、面白いか面白くないかの方がもっと大事、っていうイメージですけどね。

だよね。今はわかる。でもしゃべる前は、ギラギラしてるイメージだった。上昇志向が強そうな。いや、実際、中身はコロコロコミックなんだけど。

―コロコロ(笑)。

うん。でもコロコロコミックでも「俺、巻頭ページしか描かないから」みたいな(笑)。「後半に載るくらいなら打ち切ってくれて構わないから」みたいな。そんな感じの人だと思ってた。だから、……すごく喋ったなー。でも喋れば喋るほどほんとに共通点がないんです(笑)。

―あ、まだ共通点ないんですね。

劇団きらら『ガムガムファイター』熊本公演(撮影:劇団きらら)

絶望しづらい人

(有門がやってきて目が合い、少し涙目になる)顔見ると泣きそうになる……。

―(笑)悲しくてですか?

へへへ。いや、いとしくて(笑)。とにかく正太郎くんは明るい。全然へこたれない。スタミナがある。心身ともに。いや、キツかったはずなんですよ。今回台本が遅かったから、稽古期間が短くなっちゃって。でも、23時に稽古が終わった後、正太郎くんが「昔のきららはこのあとまた抜き稽古(※2)してたって聞きましたけど」「んーやってたねー3時4時まで」「じゃ俺にもやってくださいよ」って言うんですよ。

―おー!

もう演出としては嬉しくて泣きそうになる。最初は無理して合わせてるのかなと思ったけど、言葉のまんまだった。正太郎くんってすぐ「あ、それ面白い」って言うんですよ。でも、それも、実は最初はポーズだと思ってたんです。……すべてが疑いの眼差しで見てたから。でも話を聞いてみると、とにかく面白がる筋肉がすごい。富良野塾(※3)にいたときも、農作業とか大工仕事とか、「北海道に演劇しに来たのになんでこんなことを?」っていうことをいろいろやったらしいんだけど、いつかネタにするぞと思ったら楽しくて仕方がなかったって。エクアドルに1か月行って、銃声と強盗のなか、知り合いの娘さんの家で経営してるバナナ園でタダ働きしたり。高3のときに毎日毎日の高校の課題でいやになって、思い立って自転車で大阪を目指したり。とにかく「おもしろ経験値」が半端じゃない(笑)。

―そんな有門さんをヘコたれさせるのは大変でしょうね。

うん、思ってた人と全然違ったなあ。……気ぃ遣いですよね。人が楽しんでないとすごく不安になるっていうか。

―さっき仕込みのときも、脚立に登って作業しながら、後ろの声もちゃんと聞いてて反応できる。目線が向いてなくても全体を見渡してるなあって思いました。

うん、離れたところで交わされてる雑談にもいきなり入ってくる(笑)。「気を遣ってキツかろうなあ」って思うときもあるけど、タフなんですよね。でもリポD的なタフさと違うんだよなあ。

―楽しむのがめちゃくちゃ上手なひと、っていう感じはしますよね。

絶望しづらい人。演劇に対するスタミナがすごい人。若手の寺川くんにも、すごい勢いで質問や自主稽古を仕掛けてくれて、作品の中の2人の関係がどんどん変わって行ったり。おかげでとてもパワフルな稽古場になりました。飛ぶ劇ファン・有門ファンの皆さま、みっともなくふんばる姿がかっこいい、そんな正太郎くんを、是非、です。

劇団きらら『ガムガムファイター』熊本公演(撮影:劇団きらら)

10ステージに及ぶ熊本公演を終え、福岡公演に向けて更なるブラッシュアップをしている最中の劇団きらら。新作『ガムガムファイター』は、ラブホテルという猥雑な場所が舞台ではあるが、人間の弱さや汚い部分を肯定しながらそっと背中を押してくれる、人間賛歌ともいうべき作品となっていた。いまなお人間に真摯に向かい合う劇団きららの30年目の新作に、ぜひ触れてほしい。

インタビュー・構成・執筆:藤本瑞樹(kitaya505)

※1)寺田くん
有門と同じく飛ぶ劇場に所属する俳優、寺田剛史。

※2)抜き稽古
個別にシーンを抜き出して、そこだけ重点的に稽古すること。

※3)富良野塾
有門は過去に富良野塾に2年間所属していたことがある。


劇団きらら『ガムガムファイター』

作・演出:池田美樹
日時:2015年12月5日(土)14:00/19:00
        6日(日)13:00
会場:ゆめアール大橋 小劇場(福岡市南区大橋1-3-25)
料金:前売2,300円(当日2,800円)
   リピーター割引1,000円

【関連リンク】
劇団きらら『ガムガムファイター』特設ページ

【関連記事】
「底辺仕事」を描く!きらら30年目の新作

※情報は変わる場合がございます。正式な公演情報は公式サイトでご確認ください。

LINEで送る
Pocket