リーディングセッション『会議』稽古場レポート

2016.03.02

3月5日(土)〜7日(月)、北九州市小倉北区室町の北九州芸術劇場 小劇場で行われる北九州芸術劇場リーディングセッションvol.26『会議』(作:別役実、演出:小野寺修二)の稽古がスタートした。稽古初日の2月29日(月)、稽古場を訪れ、今回のリーディングがどのようにつくられるのかを見学した。その模様をお届けする。

北九州芸術劇場リーディングセッションvol.26『会議』稽古風景(提供:北九州芸術劇場)

今回上演される戯曲は、日本の不条理劇の第一人者と言われる別役実の『会議』。人が集まるとそこに会話が生まれ、やがて議題を見つけて自然と「会議」が始まる。人間の「会議本能」をモチーフにした作品で、登場人物たちは「会議本能」を観察するための実験に参加する。

この戯曲に取り組むのは、カンパニーデラシネラ(東京)の小野寺修二。カンパニーデラシネラの作品は、マイムの動きをベースとしている。それはときに台詞よりも流暢に物語ることがある。小野寺の方法論が、別役の不条理劇をどう立体化するのか。不条理な世界がわかりやすくなるのか、それとも、より不条理さが際立つのか。リーディングといえども、動きがふんだんに取り入れられることが予測される今回の公演は、そこのところが見どころのひとつになるだろう。

そして、北九州芸術劇場リーディングセッションの特徴のひとつである生演奏のセッションを担当するのは、ピアニストの森ゆに。小野寺・森とともに12名の出演者が、約5日間の稽古を積み、別役実の世界に挑む。

北九州芸術劇場リーディングセッションvol.26『会議』稽古風景(提供:北九州芸術劇場)

稽古場に入ってまず最初に印象的に感じたのは、小野寺の視野の広さ。普段わたしたちは気になる物事に視線を定めてしまうものだが、小野寺は、まっすぐ前を向いたまま。前方で俳優が台詞をしゃべっている横で、そのほかの演者たちがゆっくりと動いている。それを、小野寺はどこか1点にフォーカスをあてるでもなく文字通り全体を俯瞰する。個々の動きを調整し、置き道具の位置、角度を細かく決め、再度同じシーンを当たる。すると、先ほどの課題がクリアされるとともに、また別の課題を課せられる。

小野寺から出される課題は非常に緻密で丁寧で細かい。俳優はそれに常に全力で応えなければならない。そうして個々の明確な課題に取り組んでいるうちに、いつのまにか全体の画が浮かび上がっている。

小野寺にはおぼろげに全体像が視えていて、その画をつくるために全員に的確に指示を出す。とはいえ正解があるわけではなく、小野寺もあれこれ試しながらつくっている。俳優は、出されたオーダーにすぐさま応えなければならず、個々の問題や不得手な動きなどを克服するための悠長な時間は与えられない。小野寺は俳優の個々の癖を即座に見抜き、指摘して、修正する。自身も率先して動いてみせる。その指示が的確で、俳優は苦労しながらも、確実に課題を克服するプロセスを掴んでいるようだった。

北九州芸術劇場リーディングセッションvol.26『会議』稽古風景(提供:北九州芸術劇場) 北九州芸術劇場リーディングセッションvol.26『会議』稽古風景(提供:北九州芸術劇場)

舞台に立っている俳優や、置き道具、舞台装置の位置も含めた全体の配置を、舞台用語で「ミザンス」と言うが、小野寺はミザンスを常に気にして画をつくりこむ。ひとやものの位置、動くテンポなどを細かく入れ替えて、いろいろな画を試す。「透明な壁を背負ってきてる感じで」「時間のうねりが見えたい」など、ときに抽象的なイメージを伝えながら、全体の画はできあがっていく。

小野寺は森への指示もおろそかにはしない。ほしい音とタイミングを探りながら指示して、俳優たちの動きとのコラボレーションをつくっていく。

1時間で、戯曲に換算すると5行分しか進んでいない。しかし、この1時間で生まれたシーンは、細かな見どころがたくさんあって、どこを集中して見ればいいのだろうと翻弄されているうちに全体の画ががらりと変わっているという、まるで手品を見ているかのようなシーンになっていた。

全体像を見据え、個々の課題を浮き彫りにし、解決法を具体的に提示して、ひとつひとつ丁寧に解決していく。ビジネスにも通用するような、実に具体的なやり方で、手品のようなアーティスティックな舞台作品がつくられているということに感動した。

初日から、朝10時から夜の9時半まで濃密な稽古が行われた。稽古の終わりに小野寺は俳優たちに「初日から段取りを頭ごなしに言ってるけど、ごめんね。もっとゆっくり丁寧にやりたいけど時間がなくて、心のなかでは泣いてます……」と言った。小野寺の演出は、「質」を求める厳しさはあるが、穏やかで、丁寧で、的確な指示をする。疲れるそぶりはまったく見せず、とにかく貪欲に「よりよいもの」「おもしろいもの」をつくろうとしているのがわかった。

公演は3月5日(土)〜7日(月)。言葉と身体が全力で立ち上げる不条理なリーディングを、ぜひ目撃してほしい。

チケットは日時指定・全席自由で前売1,800円(当日2,000円)。北九州芸術劇場オンラインチケット、プレイガイド、電話093-562-8435、チケットぴあ(Pコード:446-549)、ローソンチケット(Lコード:88847)での取り扱い。お問い合わせは北九州芸術劇場093-562-2655まで。

執筆:藤本瑞樹(kitaya505)


北九州芸術劇場リーディングセッションvol.26『会議』

作:別役実
演出:小野寺修二
日時:2016年3月5日(土)18:00
        6日(日)14:00
        7日(月)14:00
会場:北九州芸術劇場 小劇場(北九州市小倉北区室町1-1-1-11 6F)
料金:1,800円(当日2,000円)

【関連サイト】
北九州芸術劇場リーディングセッションvol.26『会議』公演詳細ページ

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