穴迫信一(ブルーエゴナク)・大原渉平(劇団しようよ)対談

2016.09.07

ブルーエゴナク(北九州)が『ラッパー Rapper』(作・演出:穴迫信一)を9月8日(木)~11日(日)、京都市左京区下鴨塚本町のアトリエ劇研で上演する。現在京都に滞在し、京都の俳優とともに新作を製作しているブルーエゴナク。京都で稽古場として利用しているKAIKA(※1)で、ブルーエゴナク代表の穴迫信一と、同時期に公演を控えている劇団しようよ(京都)代表の大原渉平の対談が行われた。なお、対談には劇団しようよの制作で、KAIKAのスタッフでもある植村純子も同席した。

-まず自己紹介をしていただけますか。

穴迫 北九州でブルーエゴナクという劇団の代表をしてます、穴迫信一と申します。このたび、アトリエ劇研(※2)で『ラッパー Rapper』という公演をやります。

-劇研では2回目?

穴迫 そうです。
大原 でも、春先に1回劇研で短編をやりはったから、純粋には3回目?
穴迫 あ、そうですね。3回目になります。

-劇研では3回目? 京都では?

穴迫 えーっと……。
大原 何回なんやろ?
植村 団体として?
穴迫 (笑)エゴナクとしては5……回目?

-はじめて京都で公演したのは?

穴迫 3年前です。

-3年の間に5回も京都で?

穴迫 ですね(笑)。

-すごい頻度ですね。北九州より京都で公演するほうが多いのでは?

穴迫 いやいや。さすがに北九州のほうが多いですね。でも、僕個人が京都でいろいろ出てるので、それを入れると倍くらいになると思います。

-え! そんなに!

穴迫 のこされ劇場≡の『鉄の都』(※3)、劇団しようよの『スーホの白い馬みたいに』のゲストと本キャスト、gate(※4)、コックピット(※5)、gateリターンズ(※6)、『松原』(※7)、鎖骨(※8)、『AGAIN』(※9)、『リビング』(※10)、で今度の『ラッパー』……10回ですね(笑)。
植村 あ、飛ぶ劇場(※11)!
穴迫 そうだ、飛ぶ劇も。11回ですね。
大原 すごいなー。
穴迫 やってるなー。たぶん「九州でいちばん京都でやってる演劇人」ですね。

左から、大原渉平(劇団しようよ)、穴迫信一(ブルーエゴナク)

-もう、留学してる感覚?

大原 3年間の(笑)。
穴迫 そうですね(笑)。ちょっと住んでるって感じですね。松原やgateリターンズは滞在製作だったし、劇団しようよの『スーホ』は2週間、今回の『ラッパー』は4週間滞在してるんで。京都の方々、植村さんや劇団衛星(※12)の皆さんと親交を深めながら作品を作っている、という感覚は強いです。

-拠点が北九州と京都のふたつという感じ?

穴迫 そうですね。そうなりたいですね。3年間の活動でようやく「ブルーエゴナク」や「穴迫信一」を認知してもらってきた実感が出てきたので。アトリエ劇研さんが来年閉館するので、今後の課題はあるんですけど。KAIKAさんでの公演とか、劇団しようよさんと合同公演したいねとか、考えてはいます。
大原 そういうのは話してるね。

-では、大原さんの自己紹介を。

大原 はい。劇団しようよという劇団をやってます、作家・演出家の大原です。劇団は2011年4月に旗揚げしました。

-大原さんの劇団も、エゴナクと同じ時期に公演を控えているんですよね?

大原 そうです。うちはKAIKAです。

-ふたりの接点は?

大原 gateですね。KAIKAで開催されてたgateという試演会イベントで。この企画で3年ほど前から僕がディレクターをやってたんですが、その前に自分の劇団がgateでやるってときに、のこされ劇場≡さんに信ちゃん(穴迫)が出演してて。
穴迫 そうそう。
植村 大原の初KAIKAと、穴迫くんの初KAIKAがいっしょのタイミングで。

-そうなんですね。

大原 gateで、のこされ劇場≡の市原さん(※13)と知り合って。それがきっかけで市原さんが当時芸術監督を務めていたアイアンシアター(※14)での枝光演劇フェスティバルに参加することになって。初めての九州公演なので、現地ゲストとして穴迫信ちゃんに出演をお願いしたのがきっかけですね。

-お互いの第一印象は?

大原 はじめて会ったときは年上やと思ってました。当時22、23才やったんですが、お芝居もベテランみたいな雰囲気で、28、29……30いってるんかなあ、とか思ってました。ちょっとビビッてました。
穴迫 のこされのとき?
大原 そうそう。
穴迫 そのときは「俳優穴迫」みたいな感じで。俳優に徹してた。
大原 歌ってて。
穴迫 そうそう。当時は、出る芝居出る芝居歌ってましたね。
大原 だから、信ちゃんにゲストでも歌ってもらおうと。
穴迫 そうそうそう。僕ははじめて渉ちゃん(大原)を見た瞬間に、絶対仲良くなろうと思って。
大原 うんうん。
穴迫 はじめて見た劇団しようよは、お芝居ってよりライブパフォーマンスみたいで。ストーリーを追うとか台詞を聞くとかそういった感じじゃなくて、そこでの現象を共有するような内容で。それ観た僕たち北九州のメンバーは大盛り上がりで!
大原 そうそう。
穴迫 で、それを北九州でやってくれたんですよ! 枝光演劇フェスティバル期間中に。

-枝光で?

穴迫 いえ、リバーウォーク近くの橋の上。これがもう大盛り上がりで! 女子高生とかがめっちゃ集まって。
大原 もう、九州住もうかと(笑)。
穴迫 それでファンに。仲良くなった。

『ラッパー Rapper』稽古風景 『ラッパー Rapper』稽古風景

-なるほど。では作品の話にうつります。大原さんは、今回の『ラッパー』の中身は……。

大原 いっさい知りませんねえ。これ伝わるかわかんないですけど、きっと京都と北九州ではエゴナクの印象って違う感じがするんですよね。作品、作風が。
穴迫 うんうん。
大原 僕がディレクターとして呼んだときは「笑い」が大きな要素となっている作品だったし、松原のときはワークショップや俳優の個性から作品を作っていたのですが、今回はそういう「京都でのエゴナク」のイメージと違うのかなあと。『ラッパー』というタイトルから思うんですけど、自分の自叙伝なのかなあとか、信ちゃんの若い部分や恥ずかしがり屋の部分が存分に出ている、いわゆる「北九州でのエゴナク」なのかなあとか思ってます。
穴迫 そっかそっか。そもそもなんで北九州と京都で違うのかっていうと、周りとの兼ね合いかなあ。京都では笑える作品を選択しているみたいな。京都の団体さんがこんな感じなら我々だこうだ、みたいなのはある。
大原 へー。
穴迫 京都にはなんか「芸」を見せに行っているのかな。んー……でも演劇はもっとその人の根本のところが見え隠れするところにスリルや面白みがあると思うので。そういう意味では、京都で出せてない面はあると思う。
大原 京都での最初の公演でその後のエゴナクの立ち位置、展開が決まったってことは考えられる?
穴迫 あーあるある。
大原 めっちゃウケて。決して笑かすつもりで作った芝居じゃないのに。
穴迫 これまででいちばんウケたてくらいウケて。いまだにエゴナクであんなにウケたことないくらい。あれで悪い意味じゃなくて、ちょっと狂わされたかも。
大原 今回の『ラッパー』はどっちに舵を切ってる? ちゃんと北九州のエゴナクを京都の方にどっぷり届ける感じ?
穴迫 そう、ていうところなんですよ。そういう意味では根本の部分が今、だいぶ揺らいでて……いや、今は固まってはいるんですけど。最近まですごく揺らいでて。要はどんな作品をつくるとか、演劇で何がしたいとかがフワッとしてた時期があって。フワッてしてたときに『京都、ラッパー物語』ってタイトルを締め切り的な問題でつけたんですよ。でも、タイトルで場所も内容も限定されちゃって、ルール、ルールみたいな感じになったから、スマートにラッパーの話ってのにして。音楽劇……じゃないんだけど、いわゆる会話劇をなんとか脱したいと。
大原 ラッパーの物語というより、ラップが手法として絡んでくる感じ?
穴迫 そうね、そうなると思います。ただ、ラップの手法のみを取り入れた演劇は今や珍しくないし……。
大原 うんうん。
穴迫 そういったものとの差別化のため、手法を採用してるってより、俳優にはラッパーとして存在してもらう。そうやって、ラップが歌唱法を越えて生き様のようなものになっていくのを目指してます。

『ラッパー Rapper』稽古風景

-稽古を拝見しましたが、俳優にラップ講座をやってる最中で。いろいろ「試している」感じがしました。観客が手法や作品をどう捉えるのだろう、という期待感があります。

穴迫 京都だから試せるのかも。音楽劇でも会話劇でもないところを作りたいとは前から思ってたけど、北九州からもう一歩踏み込んだことを敢えてやれてるのは、京都という場所がそうさせているのかもしれないと思います。
大原 うんうん。
穴迫 質問して良い? 渉ちゃんは5年後どうなっていたいとかある?

-5年後はお互い何歳になってます?

穴迫 31歳です。
大原 33歳ですね。なんか、神経にツンとくる質問ですね。
穴迫 なんだよ(笑)。
大原 なんでしょうねえ……5年後……。2~3年前の方が「5年後は○○の劇場で」とか目標が具体的だったんですよ。
穴迫 わかる!
大原 歳を取りながら作品を作ってきて、今はいい意味でも悪い意味でも、現実的な部分や課題がはっきり見えてきて。最終的に自分が演出家として責任を果たすということをちゃんとしていかないとひらけていけないと改めて思うようになって。堅実な作品を作るのが目標のひとつかな。
穴迫 堅実というのは?
大原 う~ん。信ちゃんが音楽劇でも会話劇でもないところを作りたいというのはすっごくわかる。僕も学生のときに、プロモーションビデオのような演劇を作りたいって思ってて。物語を、時間を、お客さんに観てもらうような作品を作りたくて、だから生演奏の吉見(※15)といっしょにずっとやってて。今、そういった音楽とかの自分の武器を削いだときに、シンプルな状態で演劇を立ち上げることが果たして自分に出来るのかという興味があるというか。吉見がいない公演で一度、どれだけ演出家として出来るかをきちんと試さないと、次には進めないと思ってて。
穴迫 なるほど。

-5年後というと、劇団は?

大原 ……10年。そうなりますね。
穴迫 10年目ですね。
大原 海外とか興味ある?
穴迫 あるある。今は3年以内の目標を海外公演にしてる。
大原 具体的にどこの地域とかは?
穴迫 アジアには行きたい。ヨーロッパにも行きたいですね。もし、音楽劇とも会話劇ともいえない、なんともいえないものができあがったら、新しいもの好きのヨーロッパの人たちは楽しんでくれるんじゃないかとか思う。それを日本独自のものにできれば見てくれる人はいるんじゃないかとか思います。北九州から京都に来たときに創作に対するあれこれがパッと拡がったように、自分の価値観が拡がるという意味で、海外をふくめたよその土地には興味はある。
大原 わかるー。京都にいながら京都が何であるかを知ったのは、はじめて北九州、東京に出たときで。じゃあ、日本も日本を出てからじゃないとわからへんねんなと。ただ、日本から出てみたいという欲だけではね。海外には行きたいけど、海外でやる理由が見つけられていないてことは、海外まで行けへんなと思う。
穴迫 わかるー。なんでもかんでもわかるって思われたら嫌って思うけど、わかるー。わかるわー。もうわかるもんはしょうがない!
一同 (爆笑)

-わかり合えたところで、そろそろ締めましょうか?

穴迫 あ、そうですね、盛り上がりましたね(笑)。

宣伝し合うふたり

-では、最後にお互いの作品を宣伝しましょうか。

穴迫 お互いの? えーっと……この『いつまでもスーホの白い馬みたいに。』は大好きな作品で、はじめて見たときはすごく濃い、「わー大原渉ちゃん」って作品だと感じました。なんか、全裸の渉ちゃんがいる! って。

-普通、そういうの等身大とかって表現されるんじゃ?

穴迫 そうそうそう(笑)。大原渉平がまんま見えるくらい、濃度の高い作品だと。あるひとりの物語ってことが伝わる作品でした。この前稽古場で入れ違いになったときに、しようよのメンバーとちょっと挨拶して。
大原 あーあったね。
穴迫 そのときに、俳優さんたちが若くて。
大原 そうね。今回の俳優さんは25歳以下の方々で。キュートで。
穴迫 若いキュートな俳優さんたちに、渉ちゃんの演出がよい感じで作用するような気がします。
大原 うんそうね。
穴迫 役者さんの勢いがスーホの馬のように駆けるというか。しようよらしい作品だと思ってます。

-では、大原さん。

大原 はい。いやーホントどうなるかが楽しみなんですけど……。
穴迫 なんも見てないからね(笑)。
大原 京都で11回もの公演、経験を経て、今回は何を見せてくれるのかと。北九州のブルーエゴナクって、穴迫信一のシャイな部分がすごく見られると思っているので。今回京都のお客さんの前で何をやってくれるのか楽しみです。何より、知っている京都の俳優さんもいるので、信ちゃんと京都の俳優のセッションがどのようになるのかが楽しみです。
植村 あの……最後にちょっといいですか?

-はい。

植村 ブルーエゴナク『ラッパー』と、劇団しようよ『いつまでもスーホの白い馬みたいに。』がハシゴ観劇できるセット券を絶賛予約受付中です!せっかくなので二人の作品をお得なチケットで観劇していただけたらと……。

-あ、最後にちゃんと宣伝ぶっこんできましたね。さすが制作さんですね(笑)。

植村 いえいえ。

-ありがとうございました!

穴迫大原 ありがとうございました(笑)!

※1)KAIKA
京都にある小劇場を兼ね備えた「アートコミュニティスペースKAIKA」。

※2)アトリエ劇研
京都の民間小劇場。2017年8月末で閉館となる。ブルーエゴナクは2015年よりアトリエ劇研の創造サポートカンパニーに選出されている。

※3)のこされ劇場≡の『鉄の都』
北九州の劇団、のこされ≡劇場がKAIKAで上演した作品。2012年3月に開催されたgate♯6で、劇団しようよ『ガールズ、遠くver.3/24-25』と、のこされ劇場≡『鉄の都』が上演され、このときに穴迫信一と大原渉平が出会った。

※4)gate
KAIKAで行われている、30分の短篇を3~4本上演する試演会イベント。2010年冬から行われ、これまでに計21回開催されている。

※5)コックピット
2013年9月に行われた「gate in コックピット」。劇団衛星の演劇作品『劇団衛星のコックピット』の舞台セットをそのまま使って行った、特別版「gate」。

※6)リターンズ
2014年8月に行われた「gateリターンズ」。これまでgateに出演した劇団が再来した。

※7)『松原』
穴迫信一が京都に滞在して創作した『松原京極オプマジカリアルテクノ』。

※8)鎖骨
穴迫信一と不思議少年(熊本)大迫旭洋のコントユニット。

※9)『AGAIN』
ブルーエゴナク第九回本公演『AGAIN/やりなおし』。

※10)『リビング』
2016年4月にアトリエ劇研創造サポートカンパニーショーケースとして京都で上演されたブルーエゴナクの作品。

※11)飛ぶ劇場
北九州の劇団。6月にKAIKAで『睡稿、銀河鉄道の夜』を上演。穴迫も出演した。

※12)劇団衛星
京都の劇団。劇団衛星はKAIKAのフランチャイズカンパニーとなっており、代表の蓮行がKAIKAの芸術監督も務めている。

※13)のこされ劇場≡の市原さん
のこされ劇場≡主宰の市原幹也。枝光本町商店街アイアンシアターの元芸術監督。現演劇センターF芸術監督。

※14)アイアンシアター
北九州にある枝光本町商店街アイアンシアター。当時は芸術監督制を敷き、国内のさまざまなカンパニーが招聘された。

※15)吉見
吉見拓哉。劇団しようよ劇団員で、ミュージシャン。


出演は、出演は、野村明里、佐々木峻一(努力クラブ)、楳山蓮、月亭太遊(よしもとクリエイティブ・エージェンシー)、しらとりまな(てまり)鈴木晴海(じあまり。)

チケットは、一般前売り2,500円(当日2,800円)、U-24前売り2,000円(当日2,300円)、リピーター割1,500円。ブルーエゴナク『ラッパー』、劇団しようよ『いつまでもスーホの白い馬みたいに。』セット券3,700円、予約は予約フォームCoRichチケット!から。

お問い合わせはブルーエゴナク制作部egonaku@gmail.comまで。


ブルーエゴナク『ラッパー Rapper』

作・演出:穴迫信一
日時:2016年9月8日(木)19:00★
        9日(金)19:00
        10日(土)19:00
        11日(日)11:30★/15:30☆
   ★アフタートーク開催
   ☆アフタートーク、クロージングセレモニー開催
会場:アトリエ劇研(京都市左京区下鴨塚本町1)
料金:一般2,500円(当日2,800円)
   U-24 2,000円(当日2,300円)
   リピーター割1,500円
   ブルーエゴナク+劇団しようよセット券3,700円

【関連サイト】
ブルーエゴナク
ブルーエゴナク『ラッパー Rapper』特設サイト
ブルーエゴナク(Facebook)
ブルーエゴナク(Twitter)

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※情報は変わる場合がございます。正式な公演情報は公式サイトでご確認ください。

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