新メンバー加入で活動が活発になった宇都宮企画にインタビュー

2016.12.21

宇都宮企画(北九州)に新メンバーが加入、また、YouTubeでの動画公開を始めた。

宇都宮企画

これまで4名で活動していた宇都宮企画。本公演は2014年以降行われていないが、メンバー個々で客演を行ったり、今年3月に北九州芸術劇場で行われた『劇トツ×20分』2016に出場したりと、マイペースに活動を続けてきた。

今回加入した荒木喜成は、前回公演『うみのいきもの』にも参加。武者修行を終え再び帰ってきたという荒木の加入後、宇都宮企画は積極的にYouTubeでの動画配信を開始。宇都宮企画の今後の活動や動画配信に力を置いている理由について、宇都宮企画の宇都宮誠弥、西村佳那生、片渕高史に話を聞いた。

メンバーをブランディングする

ーそもそもなんで動画配信をしようと思ったんですか?

宇都宮 メンバーに還元できる環境を作りたいと思ったんです。動画を作品として発表して、メンバー自身のバリューを売り込む、ブランディングする。そういうことを考えたときにYouTubeって有効なメディアだなと思って。

ーなるほど。ただ、これは個人の経験からわかったことなんですけど、mola!と九州新報をやってて感じたのは、「見てくれてるひとの1%が足を運んでくれたらいいな」と思ってても、実際たぶん0.1%くらいなんですよね、反応があるのって。

宇都宮 あ……そんななんですか……。

ー0.1%のリターンを見込んだときに、そもそも演劇界隈ってパイが少ないなというのが、肌感覚としてわかったことですね。

宇都宮 それでいうと、演劇人以外に向けて周知したくてやり始めたんですよね。あと、俳優が食えないという状況をどうにかできないかと思って、メンバーの「ひと」としての部分に価値がつけられないかなと。「このひとたち面白いな」「このひとたちと友達になりたいな」と思ってもらえるような、近い距離を出せないかなと思ってます。だから、公演を宣伝して観に来てもらうというよりは、「このひとたちに会いに行きたいな」と思ってもらうというか。Twitterとかでは自分はそういうの表現しきれないから。九州新報(※1)ってどうなんですか? いま動いてるんですか?

ーあんまり動いてないです。もともとは九州新報って、二番目の庭(※2)の宣伝ツールとして育てようとしてたんだけど、フォロワーが増えて庭のことをつぶやいた途端にガーッとフォロワーが減って。「あ、実利を取ろうとするとこうなるのか」と知りました。

宇都宮 そうなんだ!
西村 ああいうのって「中のひと」が見えると醒めちゃうときがありますよね。
片渕 自分も公演情報をリツイートすると、あんまり知らないフォロワーさんが去っていく。
宇都宮 そっか……実利を取ろうとするとそうなるのか……。
西村 だから私言ったやん。YouTubeの説明部分にお芝居のことたくさん書くのやめたら? って。その部分なんよ〜。
宇都宮 でも最初に説明はしとかんといかんやん。あとから言うよりは。
西村 あー。
宇都宮 だから最低限の説明は入れてる。

ーいま決めなくてもいいんだろうけど、心を殺して実利につながることをやるか、自分たちがおもしろいと思うことを発信し続けて、アンテナに引っかかってくれるひとを待つかのどっちかでしょうね。

宇都宮 いま結構どっちもやりよる感じやね。
西村 うん。でもいつものふざけすぎてる感じは殺してる。

ー最初の動画を観た印象としては、「あ、たのしそうにやってるな」と思ったんですけど、それって僕がみんなのことを知ってるからなんですよね。まずそこ(知り合い)から巻き込んでいくのが最初かなと思うけど、「誰が観てもおもしろいと思うもの」を作る方が受けやすいんですよね。

宇都宮 5〜6分のものを作りたいんやけど、どうしても長くなる……。あと編集機材が大変……。iPhoneで撮って、iPadで編集してます。俺Mac使い切らんのよ〜。
片渕 あんなに、買ったときあんなに興奮してたのに!
宇都宮 6年間使ってわかった。Windowsの方が向いとる。

ー新人が入って、宇都宮企画としての活動が活発になるぞというときに、YouTubeで動画を配信するってなったとき、ふたりはどんな感じだったんですか?

片渕 「誠弥さん(宇都宮)がいまいちばんやりたいことってこれなんだー」と思いました。
西村 「これやりたいんだー」って。
片渕 いままでが団体としてはあまり活動をやってなかったので、やりたいことがないよりは全然いいなと思って。……って言うと後ろ向きに思えるかもしれないけどそうではなくて! これでなにか誠弥さんのなにかが変わったり満されたりするなら、いっしょにやりたいなと。
西村 宇都宮さんの表現欲求みたいなのを感じますね。

ー不思議少年(※3)のツアーが終わってから、そういう気持ちになったんでしょうね。

片渕 それはすごく感じます。

演劇と違うジャンルから、活動を俯瞰する

宇都宮 動画配信を始めようと思ったきっかけが、YouTubeで動画配信してるひとが、配信を始めたばかりの時期のことをしゃべってる動画があって、「いやあ、YouTube始めたころはすごく貧しい生活で、もやしとかを焼いて食べたり、電気が止まったりすることがありまして」みたいなことを言ってたんですけど、それ結構いまの生活と同じやなと思って。これ以上悪くならんなと思って(笑)。

ーそこに共感したんだ(笑)。「いまが底辺や」って(笑)。

宇都宮 役者、俳優ってそもそもが、ほかのひとが自分でやるには恥ずかしいと思うことを舞台に立ってできるようなひとたちだから、なんでもできるかなって。「演劇らしさってなにかな」、というか、「俺らができることはなにか」というのを探してますね。いまは撮るたびにいろんな反省点が見つかって、1撮ったら10以上の反省点が見えるから、新しいことをやるのって単純におもしろいなあという感じです。それが演劇にも生かされるなって。演劇と違うジャンルから、演劇を俯瞰して見られるというか。
小劇場でやってるひとたちって、時間あるひとも結構いると思うんですけど、あんまり映像に力を入れてる印象がないんですよね。宣伝動画はあるけど、一般のひとに向けたチャンネルにはなってなくて。まず一般のひとたちがおもしろいと思う動画を、宣伝動画の前に作りたいですね。

ー「ひとをどう巻き込んでいくか」が課題でしょうね。まぐれ当たりでもなんでも。やってたら見つかることはあるでしょうね。……それでいうとmola!は全然。

宇都宮 (笑)

ーまぐれ当たりはNARUTOの記事だけ。NARUTOの公演の記事を書いたら100リツイートとか行って。それだけでした。

宇都宮 すげっ! 自分たちがおもしろいと思ってる団体とかひとに近づきたいなっていう感情は誰にでもあると思うんですよ。そういうひとたちを巻き込めたらなと思ってます。

ー差別化っていうのは大事ですよね。それ以上に大事なのは続けていくっていうことかな。

宇都宮 そうですね。

ーmola!はもうほんとに……。続けるのが……。

宇都宮 (苦笑)

この日は動画の第2弾が配信された日でもあり、再生回数を気にしながらのインタビューとなった。動画を再生しながら話が続く。

宇都宮 毎回入れてるテーマとして、くだらないレビューを入れてるんですよ。今日上げたやつでも、荒木がテレフォンショッピングしてるんですよ。
西村 演出したねえ。
片渕 いま見れない……。
宇都宮 (iPadを用意して)よかったらこれで見てください。
片渕 えーっちょっと……。
西村 私あっちに行こ……。
宇都宮 ふたりとも全然出てないやん! 主に荒木やん!
片渕 いやでもちょっと……自分が出てるのって目の前で見られたくない……。タバコ吸いに行こーっと!(出て行く)
西村 タバコ吸いに行こう! 恥じらい! 恥じらいが!(出て行く)

ー(動画を見て)学生のころ、深夜にたまたま見た番組で「北半球で一番くだらない番組」っていうのがあって、それっぽいですね。

宇都宮 そうそうそうそう! 「北半球で一番くだらない番組」! 三木聡(※4)っていうひとがやってるやつで、あれすごい好きなんですよ。「日光テレフォンショッピング」っていうコーナーがあって、完全にあれをリスペクトしたやつですね。こういうのは毎回入れていきたいですね。

その後、西村・片渕が戻ってきて、部屋に放置された、動画の撮影に使用されていた小道具を触りながら話が続いた。いい意味で演劇に固執せず、フラットな視点で先を見据える宇都宮と、そこに全幅の信頼を寄せながらも、楽しいことをやろうとしている西村・片渕。新たなメンバーを得て、今後予想もしなかったようなところに到達できることを期待したい。

構成・執筆:藤本瑞樹(kitaya505)

※1)九州新報
インタビュアーである藤本瑞樹が片手間にやっていた嘘ニュースサイト。現在はサイトの運営は行っておらず、Twitterでたまに嘘ニュース記事のタイトルだけをツイートしている。それがたまにバズって現在17,000名ほどのフォロワーがいる。

※2)二番目の庭
同じくインタビュアーの藤本が主宰のカンパニー。現在は活動のペースをかなり緩め、2〜3年に1本の作品をつくる程度の頻度で活動している。

※3)不思議少年
熊本を拠点に活動する劇団。9〜11月に全国縦断ツアーを行っており、宇都宮は客演で参加していた。

※4)三木聡
放送作家、映画監督。シティボーイズライブの舞台演出のほかに、テレビドラマ「時効警察」や、映画「インスタント沼」「俺俺」などを手がけている。

【関連サイト】
宇都宮企画(Twitter)
宇都宮企画(YouTubeチャンネル)

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