「抑揚を持たない宇都宮誠弥と、彼のモラトリアムな年」(最終回)藤原達郎

2017.09.27

前回

やはりバックヤードにいるのか、受付に人はおらず、ロビーにあるパネルで部屋を選んだ。人の気配はないのに、点灯しているパネルは一つだけだった。白い簡素な部屋だった。見たことのある部屋だったがどこでも見たのか思い出せなかった。パネルのボタンを押し、カギを取って部屋へと向かった。

部屋に入るとベッドとソファだけが置かれていた。他には何もなかった。宇都宮はミンソに抱きつき、キスをした。目をつむり、感触を味わった。ベロ、よだれ、と思った。それ以外は特になかった。目を開けるのもおかしいと思ったので、そのまましばらくベロとよだれの感触を味わい続けた。

いいかげんよだれでべとべとになってきたので、宇都宮はうす目を開けてベッドの位置を確認し、ミンソを押し倒した。口を離し、ミンソの服を脱がせにかかった。風呂に入っていなかったが、ミンソは気にしないだろうと思った。シャツのボタンを外すのがまどろっこしかった。どうにかシャツとブラジャーを剥ぎ取ると、ミンソの胸部に宇都宮が描いた落書きのおっぱいが現れた。宇都宮はぽかんとした。ミンソの顔を見ると恥ずかしそうに胸を隠したので、萌えた。手をどけ、おっぱいに触れると、ミンソは目を閉じ、吐息を漏らした。俺は間違っていない、合っていると自分に言い聞かせ、乳首らしきピンク色の点を舐めた。何の感触もなかった。ミンソのズボンとパンツを下ろすと、女性器の記号が現れた。宇都宮も自分のズボンとパンツを脱いだ。股間にモザイクがかかっていた。酔いが覚めていないのだろうか。よくわからないなりに宇都宮のモザイクをミンソの記号に近づけた。つながった、ような気がした。ミンソが「ア-」と言った。棒読みだった。気持ちがいいのかどうか全然わからない。それでも宇都宮は記号めがけて腰を振った。宇都宮はずっとこうしたかった。待ち望んだ都合のいい未来がようやく訪れたのだ。今は腰を振ることが宇都宮の全てだった。

急にドアがバンと開いた。ハムスターだった。宇都宮の倍くらい大きかった。ハムスターは身をねじるようにして部屋の中に入ってきた。そして「エサはっ!?」と宇都宮に怒鳴った。二日連続で忘れていた。「ごめん、明日には帰るから、もうちょっと待っ…」言い終わらないうちにハムスターは宇都宮の頭をかじり、首から上を食いちぎった。血が吹き出した。ハムスターは宇都宮の頭を食い、身体はその辺に捨て、ミンソと交尾した。ミンソが棒読みであえいだ。「ハムスターの発情期は、主に春と初夏と言われているよ」と腰を振りながらハムスターが言った。もう9月だった。ベッドも寝ているミンソも宇都宮の返り血を浴びてどろどろだったが、返り血はバラの花びらへとモーフィングした。ミンソはバラにまみれ、「アハーン」と棒読みでハムスターを誘惑した。ハムスターのでかいキンタマがさらに膨れ上がった。ハムスターに突かれながらミンソは棒読みであえいだ。ハムスターは射精した。射精と同時にキンタマも身体も縮み、ハムスターはベッドの下へと潜り込んだ。残されたミンソはバラに埋もれながら「アー」とまだ機械的にあえいでいた。宇都宮はその様子をただただ見ていた。首がないのに、どうやって見ているのか不思議だった。

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