全国10ヶ所ツアー『ただいま』永山智行インタビュー

2018.11.27

劇団こふく劇場(都城)が第15回公演『ただいま』(作・演出:永山智行)を年明けに沖縄・福岡・三股で上演する。年内には12月1日(土)から札幌・いわき・東京ツアーも行う。

劇団こふく劇場 第15回公演『ただいま』

今回上演する『ただいま』は、劇団創立25周年を迎えた2015年に、全国6か所で上演された作品。永山智行に今回のツアーや自身の演劇観について聞いた。

ー永山さんにとっての印象深い劇体験を教えてください。

劇場体験として強烈に覚えているのは、中学生ぐらいだったでしょうか、父と兄と一緒に都城市中央公民館で観た桂枝雀(※1)の落語です。その場にいたみんなが、ほんとに腹の皮がよじれるほど笑っていて、その場に居合わせた人々が、その時間を共有するという「劇場の幸福」の体験は、この体に深く刻まれています。今でもやっぱりあの原体験を求めている自分が確実にいますし、学校公演で子どもたちが笑ってくれたりすると、ほんとうに嬉しくてたまりません。

※1)桂枝雀
2代目桂枝雀。1939~1999。師匠である桂米朝と並び、上方落語界を代表する人気噺家の一人。

ー演劇との出会いは、いつ、どのようなものでしたか?

演劇との出会いは高校の演劇部です。当時部員が3人しかいなくて、かわいそうになって勢いで野球部を辞めて入ってしまったのが、はじまりです。まあ性格なんてそんなに変わらないのでしょうから、やっぱり多数より少数、大きなものより小さなもの、そんなものを勢いで選んでしまうのは、変わらないですね。でも、だからこそ、宮崎で、しかも演劇をやるなんてマイノリティなことを続けてこられたのかもしれません。

ーこふく劇場はご自身にとってどのような存在でしょうか?

簡単に言えば、自分はつまらない人間だという感覚がはじまりにある気がします。それに比べ他人はなんと面白いことか。そんなこと考えているのか、そんなこと経験したんだ、そんな風に行動するのか、そんな他者への興味、というか面白がりが、集団を支える大きな要素なのかもしれません。
わたしは劇団で稽古をしている時間が大好きで、なるべく演出家として稽古を主導しないようにしています。急に俳優の誰かが歩き方について気になりだしたら、みんなでそのことをいろいろ試してみたりしますし、誰かの人生相談みたいなことがはじまったら、稽古時間のすべてをそれに費やすこともあります。いちいち立ち止まりながら、考え、試してみる、そんな創作ができるのは、やはり劇団という集団があるからだと思っています。
本番という結果が先にあり、そこに向けて効率よく稽古を進めるわけではなく、みんなで過ごしてきた時間の成果としての本番がある。それがいまの劇団こふく劇場である気がします。作品づくりだけでなく、子どもたちや障害を持った人たちとのワークショップ(※2)、本拠地である三股町のみなさんとの創作、小中学校での公演、演劇フェスティバル「まちドラ!」(※3)の運営など、面白がりながら文句ひとつ言わず献身的に動いてくれるうちの劇団の俳優たちには、本当に頭の下がる思いです。

※2)子どもたちや障害を持った人たちとのワークショップ
身体障害者との創作を行う「みやざき◎まあるい劇場」。(※3)演劇フェスティバル「まちドラ!」
三股町立文化会館周辺施設を活用した演劇フェスティバル。

ー今回10か所ツアーをやろうと思ったきっかけを教えてください。

わたしも50歳を過ぎて、この先いつまでツアーができるかわからないし、今のうちに行けるとこまで行こうというのが、まあ、きっかけではありますが、でも何より、今回上演する『ただいま』という作品を持って、会いたい人のところへ会いに行きたい、というのが、大きな動機です。劇団こふく劇場は、先の質問にあったように、劇団として時間をかけて作品をつくるので、ひとつの作品をなるだけ長くやれたらと思っています。特に2015年に、劇団の25周年の集大成としてつくったこの『ただいま』は、わたしたちのすべてが、つまり出会ってきたすべての人たちと過ごした大事な時間が詰まった大事な作品で、その年は、地元の三股と門川のほか、北九州、三重、松山、東京と旅をしました。それでも、これまでわたしたちが出会ってきた人たちがいるすべての土地にはうかがえませんでした。今回のツアーで10箇所まわっても、もちろんそのすべてにはうかがえないのですが、まあ、また機会があれば、今回うかがえなかったみなさんのところへもこの作品でうかがえたらと思ってはいます。

ーツアー前半戦が終わったところですが、印象に残っていることはありますか?

「大変ですねー」と言われることもありますが、でもやっぱりその土地にうかがい、ほんとうにいろんな方と出会える、そのことの喜びは何にも代えがたいものがあります。ここまでのツアーを振り返っても、思い浮かぶのは、出会ったみなさんの顔、顔、顔です。日本の、いろんな土地に、演劇を楽しんでくださる方や、すぐれた演劇作品をつくろうとする方、その環境を整えようとする方などが、多くはないかもしれませんが、確かにいらっしゃるのだということを、こうしてツアーでの出会いを通して実感できるのは、宮崎で活動しているわたしたちにとっても大きな励みになります。
でも、10箇所ツアーなんてことができるのは、やはり、各地で受け入れをしてくださるみなさん、そして何より制作を担当してくれる髙橋知美さん(※4)の存在がほんとうに大きいです。制作としてはほんとうに大変な仕事だと思うのですが、彼女が嫌な顔ひとつせず、こんなわたしたちにつきあってくれる、そのことがこのツアーを支える大きな力です。劇団を褒めていただくのはありがたいですが、でもそれは、決してわたしたちの力ではなく、こんな風に劇団を支えてくださる多くのみなさんのあたたかな気持ちのおかげだと思うのです。

※4)髙橋知美さん
福岡を拠点に活動する舞台芸術の制作者。キューズリンク所属。『ただいま』の制作を担当。

ーこの先のことは何か考えていらっしゃいますか?

『ただいま』は、「只、今」ということでもあります。劇団としても、その時々の「今」という時間でばったり出会う人や出来事、そんなものを大事にしたいと思っているので、よく訊かれる、夢や目標や展望などは、いつも「ありません」と答えることにしています。なんか素気なくてごめんなさい。でも、そんな物語だってあるのです。わたしたちは、生きている間はいつまで経っても、今日という時間にしか居られないので、やはり今日の出会いのひとつひとつを味わうことしかないのではないかとも思うのです。

ー最後にmola!をチェックしている方にメッセージをお願いいたします。

ご都合が合えば、ぜひどこかの劇場でご覧ください。そしてその出会いがみなさんにとっても、いい思い出になるよう、わたしたちはこの『ただいま』という作品を、旅をしながら少しづつ丁寧に磨いていければと思っています。


出演は、あべゆう、かみもと千春、濵砂崇浩、大迫紗佑里(以上、劇団こふく劇場)、中村幸(劇団ヒロシ軍)。

各地の公演詳細は劇団こふく劇場『ただいま』特設サイトを参照のこと。

お問い合わせは劇団こふく劇場gekijo@cofuku.com、0986-26-6422まで。


劇団こふく劇場 第15回公演『ただいま』

作・演出:永山智行

【ツアースケジュール】
札幌:2018年12月1日(土)~2日(日)扇谷記念スタジオ・シアターZOO(札幌市中央区南11条西1-3-17)
いわき:12月8日(土)~9日(日)いわき芸術文化交流館アリオス(いわき市平三崎1-6)
東京:12月12日(水)~16日(日)こまばアゴラ劇場(目黒区駒場1-11-13)
沖縄:2019年1月12日(土)~13日(日)アトリエ銘苅ベース(那覇市銘苅204)
福岡:2月1日(金)~2日(土)パピオビールーム(福岡市博多区千代1-15-30)
三股:2月15日(金)~17日(日)三股町立文化会館(北諸県郡三股町大字樺山3404-2)

【関連サイト】
劇団こふく劇場 第15回公演『ただいま』特設サイト
劇団こふく劇場(Facebook)
劇団こふく劇場(Twitter)

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※情報は変わる場合がございます。正式な公演情報は公式サイトでご確認ください。

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