愛媛発、世界劇団が4都市ツアーに挑む!

2020.01.06

世界劇団(愛媛)が4都市ツアー『天は蒼く燃えているか』(作・演出・振付:本坊由華子、原作:芥川龍之介(「アグニの神」より))を2020年2月〜4月にかけて、広島・愛媛・北九州・東京で上演する。

世界劇団 4都市ツアー『天は蒼く燃えているか』

愛媛県東温市を拠点として、ツアー公演やコンクール参加など、精力的に活動を行っている世界劇団。現役の医師や医学生を中心とした劇団としても注目を集めている。2020年2月〜4月にかけて、劇団初の4都市ツアーに挑む。代表で、作・演出・振付を担当する本坊由華子に、劇団や今回のツアーについて訊いた。

―世界劇団はツアーのほかにコンクールなどにも積極的に参加されており、いま若手として注目を集めている劇団のひとつになっていますが、世界劇団の特徴を教えてください。

劇団の作風としては、「初期の野田秀樹」と称されることが多々あります。私の戯曲は日常的な現代口語はほぼ無く、詩的な劇文体を特徴としています。また、身体性が強く、いわゆるコンテンポラリーダンスの動きを多用し、「身体が喋る」ような表現を特徴としています。具体的には台詞を話しながらダンスをしているような感じでしょうか。音楽の機微を感情や言葉の機微に当てはめ、言葉や俳優の感情が振付と結びついて、全身の表現になるようにしています。基本的に振付は私が行っているのですが、台詞の中で音楽やダンスを多用し、シーンを広げていくという手法です。今の小劇場界では現代口語演劇が主流だと思いますが、よく「時代を逆行しているね」と言われます。生身の身体の熱量や、感情や意味が身体の形から滲み出ることが面白いと感じていて、そういった部分を押し出しているあたりが、90年代の小劇場演劇のような表現形態なのでしょう。そういった点からも「初期の野田秀樹」と言われるのだと分析しています。

これまで現代口語的な日常の言葉を用いることもありましたが、今年(2019年)から身体表現に着目するように特化してきました。「世界劇団の演劇」を前面に押し出すように意図的に取り組んでいます。

―世界劇団は「医師や医学生による劇団」としての認知度も高いと思いますが、病院で働きながらツアー公演も行うというのは、かなりハードかと思います。仕事と演劇の両立はどのようにしているのでしょうか?

正直、演劇と仕事の両立はかなりつらいですね(笑)。体力的にも時間的にもかなり厳しい状況です。それでもやっていく秘訣は「スケジュール調整を行う」という一言に尽きます。平日の日勤+夜勤宿直、また土日も宿直や学会や勉強会などにも参加すると、ほとんど3か月先までスケジュールが埋まるんですよ。時間を確実に確保できるのは宿直のない平日夜〜深夜までと、土日は数時間程度です。

世界劇団はひとつの作品を創作するのに、長編なら1日4時間程度(19時~24時)の稽古を週6で、3か月行うことを目安としています。が、仕事が忙しい中で稽古時間を確保することがやや困難になってきました。実際に会って稽古できない場合、Skypeを繋いで稽古をしたり、なるべく稽古時間を確保できるようスケジュールを調整することに命懸けです。

「仕事が忙しい中でよく演劇ができますね」と言われることもたびたびありますが、私たちは仕事があるからこそ創作の質が上がるような気がしています。例えば、俳優がベストパフォーマンスを叩き出すために、演出家が極限状態まで追い込むことがありますよね。昨今演出家のパワハラが問題になっていて、それを肯定するつもりはありませんが、「追い込むことで創作の質が上がる」というのは現にあると私は考えています。極端な話、時間的にも体力的にもギリギリになった状態の先に上質なパフォーマンスが生み出されるとしたら、それは何も演出家がやらなくてもいいんじゃないかって思うんですよね。例えばツアーとツアーの間に学会発表があったり深夜まで稽古をして翌日仕事もこなし、体力的にも精神的にもギリギリの状態に追い込まれたとき、より集中して作品に取り組めている感覚が私にはあります。仕事をしていれば、演出家が俳優を追い込まずとも、自然と極限状態に持っていける。そういった意味では、私は今の生活に満足していて、より良い創作活動のためにも仕事で忙殺されている状態が良いなと思っています。「医者と演劇をやる」というのは、生活スタイルというより創作スタイルに近いのかもしれません。

―「医師・医学生である」ということが創作に活かされていると感じる部分はどこですか?

戯曲に書かれる言葉について「サイエンスポエム」と言われたことがありました。あまり自覚的ではなかったのですが、戯曲の中で科学的・医学的な用語が確かに他の作家に比べて多いのでしょう。俳優も作家も医師ですから、科学用語や医学用語が職業として身についていて、紡ぎ出される言葉が科学的な用語に偏るという特徴があります。例えば「おはよう」という一般的な現代口語と「隔離拘束(※1)」といった専門的な用語のウェイトが、私たちにとってはほぼ同等なのです。以前は自分たちが偏った集団であることに危険を感じていていました。「自分たちの面白いと思うこと=医者が面白いと思うこと」なのではないか、この面白さはかなりバイアスがかかっているのではないかと危機を感じ、サイエンスポエムをなるべく一般用語に置き換えたりしていたんです。しかし、最近はそういった自分たちの偏りを自分たちの強みだと自覚し、意図的に創作に織り込むようにしています。

※1)隔離拘束
精神状態が不穏な患者を一時的に保護室に隔離し、身体を固定させることで行動を制限すること。

―今回の新作『天は蒼く燃えているか』はどういった作品でしょうか?

『天は蒼く燃えているか』は芥川龍之介の「アグニの神」が原作となっています。芥川の言葉自体が劇文体に近く、また動きの多い躍動的な描写が多く見受けられます。こういった点からも世界劇団が目指している「劇文体+身体」という表現形態に持ち込みやすいというのが予測できました。また、この「アグニの神」は童話なのですが、童話をなぞりつつも現代の日本を反映した内容になるかと思います。「アグニの神」は「炎の神」と言われています。炎には怒りの炎や、戦争の炎、命の灯、オリンピックの聖火、ネットの炎上、など、さまざまな炎のエッセンスを加えながら作品にしていきたいと考えています。

―今回、創作面において挑戦したいことは何ですか?

2017~2018年は、一つの作品を五都市で上演する機会があり、さまざまなコンクールに参加しました。他劇団との表現を比較する機会がかなり多かったように思います。年齢的にはもうすぐ30歳を迎えようとしているのですが、私は「30歳までに自分の表現手法を確立する」ということを目標にしていました。世界劇団が何を面白いと思っていて、どういった表現が得意なのか。2017~2018年は特に考え抜いた年で、「身体性と劇文体」という特徴にたどりついたのです。2019年からは、よりこの特徴に特化していきたいと考え、「身体性と劇文体」のバランスについて検証していきました。稽古の中では作品を創るよりも、「表現の創り方を創る」という稽古からスタートしました。今まで私の身体の振付を振り移ししていたのですが、振付を生み出すメソッドを共有し、振付自体は俳優に創り出してもらいました。

世界劇団『紅の魚群、海雲の風よ吹け』公演写真(第10回せんがわ劇場演劇コンクールで上演) 世界劇団『紅の魚群、海雲の風よ吹け』公演写真(第10回せんがわ劇場演劇コンクールで上演)

2019年にせんがわ劇場演劇コンクール(※2)に参加したのですが、この時は「身体性+劇文体」を前面に押し出す作品にしました。グランプリは獲れませんでしたが賞には繋がりましたし、30歳になるまでに自分の表現を貫き、作品として残せたことは良かったと思っています。今回の作品は7月の『紅の魚群、海雲の風を吹け』に出演していただいた俳優陣で作品を創作します。創作メソッドがある程度共有された関係の中で、その先の表現に進めるのではないかと期待しています。振付を創るだけでなく、振付の即興性についてもう少しセンシティブに踏み込めるのではないかと考えています。

※2)せんがわ劇場演劇コンクール
東京都調布市仙川町にある市営の劇場「調布市せんがわ劇場」で行われる演劇コンクール。世界劇団は2019年に開催された第10回せんがわ劇場演劇コンクールでオーディエンス賞を受賞。特典として2020年4月に同劇場での公演が決まった。

―今回4都市ツアーに挑みますが、どういったツアーにしたいですか?

2017年、2018年と3都市ツアーをやって、体力がギリギリ保てるのが3都市だと思っていたんですが、東京の劇場が使用できるということで、タイミング的に4都市ツアーになりました。自分の体力と精神状態が保てるかがかなり不安なので、今回のツアーは「私たちの限界突破!」というのがひとつの到達点ではないでしょうか。

2017年に上演した北九州や広島に再び伺うことで、西日本の演劇シーンの懸け橋になれたらと勝手に期待しています。広島公演では公演日程が近いということもあって、「下鴨車窓」(京都)の田辺剛さんとも何かやれたら(※3)と話しているところです。

※3)「下鴨車窓」の田辺剛さんとも何かやれたら
下鴨車窓も『散乱マリン』を3月に広島のJMSアステールプラザで上演。世界劇団『天は蒼く燃えているか』とのセット券を販売する。セット券は4,000円(広島公演のみ、前売りでの取り扱いのみ)。

また、2018年に東京のこまばアゴラ劇場にて作品を上演する機会をいただき、今回はせんがわ劇場で上演させていただきます。集客がどの程度見込めるか不安ですが、スケジュール調整を命懸けで行い、限られた有給を取得して上演しに行きますので(笑)、ぜひ多くの方に観に来ていただきたいです。


出演は、本坊由華子、赤澤里瑛、兵頭美咲、品部大和(星屑ロケッターズ)、片渕高史(ハコベラ)。

チケットは、一般前売2,500円(当日3,000円)、U22前売2,000円(当日2,500円)。シバイエンジンでの取り扱い。

お問い合わせは世界劇団sekaigekidan@gmail.comまで。


世界劇団 4都市ツアー『天は蒼く燃えているか』

脚本・演出:本坊由華子
原作:芥川龍之介(「アグニの神」より)
料金:一般前売2,500円(当日3,000円)
   U22前売2,000円(当日2,500円)

【広島公演】アステールプラザ芸術劇場シリーズ[リージョナルセレクション]
日時:2020年2月29日(土)19:00
      3月1日(日)14:00
会場:JMSアステールプラザ 多目的スタジオ(広島市中区加古町4-17)

【松山公演】
日時:2020年3月14日(土)12:30/18:00
        15日(日)12:30/18:00
会場:シアターねこ(松山市緑町1-2-1)

【北九州公演】
日時:2020年3月21日(土)14:00/19:00
        22日(日)14:00
会場:枝光本町商店街アイアンシアター(北九州市八幡東区枝光本町8-26)

【東京公演】第10回せんがわ劇場演劇コンクール「オーディエンス賞受賞公演」
日時:2020年4月18日(土)19:00
        19日(日)11:30/16:30
会場:せんがわ劇場(東京都調布市仙川町1-21-5)

【関連サイト】
世界劇団
世界劇団(Twitter)

世界劇団 4都市ツアー『天は蒼く燃えているか』

※情報は変わる場合がございます。正式な公演情報は公式サイトでご確認ください。

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